lux luceat eis


6.癒し

私が占われる事になった晩。
自らを占い師と称したディーターがやってきました。

ならず者の彼は誰にも信じて貰えませんでした。
何時も怒ったような顔をして
誰も寄せ付けない人なのに
まるで子どもみたいに
一晩中、しがみついて。

「怖いんだ」
「俺が信じて貰えないばっかりに
きっとお前も信じて貰えない」
「もしお前が嘘の判定を出されて
吊られてしまうかと思うと」
「無実が確定しても
人狼に喰われてしまうかと思うと」
「恐ろしくて、眠れやしない」

私は静かに問いました。
「あなた自身が吊られる事は」
「喰われる事は、怖く無いのですか?」
私自身、毎晩毎晩
何時喰われるのか、何時吊られるのか
恐ろしくてたまらなかったから。

「ああ」
彼は涙を飲み込んで
顔を上げて言いました。

「そんな事ぁ、すっかり忘れてた」

溜息混じりのその笑顔は
嘘偽りの無いもので
癒されたのは、私の方でした。
7.守り神

皆の信頼を集めていたのは
もう一人の自称占い師・オットーでした。
普段から誠実だった彼は『村の守り神』とまで呼ばれ
ある種神格化さえしていました。

昨晩の事があるまでは
私も彼を信じていました。

「神父さんは人狼だったよ」
「とても残念なのだけど…」

彼が下した結果は偽り。
彼こそが、人狼だったのです。
8.咆哮

「ジムゾンは人狼じゃねえ!」
「何故俺の話を信じない!」

彼の叫びは虚しく響き、その夜私は死にました。

あの夜の癒しは死の恐怖を消してくれました。
けれど
残される彼の事だけが、不憫でなりませんでした。

彼はその晩一人墓場で泣き続け
翌日は何一つ喋らないまま
私と同じように死にました。
9.共有

死した私に更なる偽りの判定を下したのは
善良な羊飼いの女性でした。
しかし
彼女は人狼ではありませんでした。

微笑んで獣に手を差し伸べる彼女の姿は
一向に変化する様子はなく
ただ、瞳だけが禍々しい赤の色に染まっていました。

「こんな村、滅びてしまえばいい」
「あなたと私は一緒だわ」

遠い昔、愛した人に捨てられてしまった彼女は
心に深い傷を負ったまま
心を病んでしまっていたのでした。

「そうね、ディーターに判定を下せば
私の役目ももうお終い」
「覚悟なんてとっくにできているわ」
「本当の霊能者だった村長さんが
食べられてしまった時から」
「あなたもそのつもりだったでしょう?」

彼女はにっこり微笑んで
それから先は毛深い影に覆われてしまって
彼女がどういう表情をしているのかは
解りませんでしたが
彼女を抱き締めた獣の目から
一粒、涙がこぼれました。


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